第1章 出会いはさようならから
どうも、人の気持ちを察したり気遣う事が不得意な私としては、そう言う事が流れるように出来るこの人は尊敬に値する人物だと思う。
出会って間もないのに、そんな行動が出来るなんて驚きながら目を見張っていると、組長と目が合った。
「そんなに見つけられると食われンぜ、俺に」
悪戯子のように目を細めてニィと笑う組長。
こういう所は少々子供っぽいと思う。
「結婚するからいずれは食べるんでしょう?」
そう、目を細めて言うと組長は優し気に目を細めて私の額にキスを落とす。
「…思いが実るまで、シねぇよ。愛無しなんて、意味ねェから」
「意外と紳士的なんですね…」
驚いて目を見開くと、組長は楽しげにケラケラと笑った。
「すげェ紳士よ、俺。これから目一杯知ってね、俺のお姫様」
そう言うと、組長は屋敷の外へと踏み出した。
目の前に広がる空は、清々しい程の青空で、潔い生き方をする組長に似合う、なんて少しだけ思った。