第1章 出会いはさようならから
私は、横抱きされるがままお祖父様の部屋から出た。
組長は私を横抱き…、いわゆるお姫様抱っこしているが、持ち直す事もせず、かと言って私が首を持って支えることもせず、軽々と持ち上げている。
この人は、確実にモテそうだな、と思いながら組長の顔を見上げていた。
「なぁに、俺に惚れた?」
目が合うとふ、と笑みを零して笑う組長。
幼い顔つきなのに、笑顔は何処か飄々としている。
そんでもって、柔らかい口調とは裏腹に誰にも押し負けない絶対的な雰囲気。
それを間近で感じて、モテそうだと感じるのはこの人から感じる危ない雰囲気のせいだと確信した。
密着する体から、組長のしっかりした男らしい体付きもわかる。
「いえ、慣れてそうだなって」
「ん~?妬いたぁ?」
「全く」
それでもって、この人は凄く話しやすい人懐っこさを持ち合わせている。
にしし、と私に笑いかける姿を見て、お祖父様の威圧的雰囲気は一気に消えていた。
そして、お祖父様の部屋から離れる時、組長は一瞬だけ目付きを鋭くしお祖父様を一瞥して…。
凍り付くような眼差しを見て、彼の行動の理由を全て察した。
どうやらこの人は、予想以上に気を使ってくれていた事に、驚きを隠せなかった。