第1章 出会いはさようならから
その後、松野夫婦は話が進まない為、家に帰って行った。
実家で話し合いするらしい。
「あの、後日連絡するんで…」
組長は、照れたように頭を掻きながら、我が家を去っていく。
怒らせなければ、結構話しやすい人だなーって印象。
「はぁ…、お前が居てくれてほんっと助かった…」
旦那は、脱力しながらテーブルに突っ伏した。
酷くお疲れの様子を見て、私は彼の頭を撫でる。
「ま、これに懲りたら危ない人の女には手を出しちゃ駄目だよ」
「わかってるよ…、後腐れない人で、バレてもよさそうな人かぁ~」
私達の関係は、既に家族だ。
だからこそ、「浮気をしちゃ駄目」と言う言葉は出てこない。
「そうだ、なんかお前松野さんに気に入られたみたいだな。次会う時は、俺だけで行くかぁ」
深々とため息をつく旦那を見て、私は疑問に思う。
彼は、無事帰ってこられるのか、と。
「怪我しても知らないよ?」
「弁護士連れてく」
「それが確実だね。できれば、そっちの家だけで解決してほしいかな」
私は、ラーメンの支度をしながら言うと、旦那は寂しそうに「わかった」と答えた。
その声を聞いて、また思う。
私たちは、本当に結婚してよかったのか。