• テキストサイズ

a piece of memory

第3章 変転


 今日まで見つからずにいられたのが、むしろ不思議なほどだ。
「久し振りだな、シルヴァ」
「十六、七の剣士風の男、って触れ込みじゃぁ、見つからないわけだな。まさか女連れとは……」
 底意地の悪そうな、冷たい笑顔を浮かべて近付いてくるのは、かつて俺の同僚だった男達だ。
「よく思いついた、と言いたいところだが、こんな娘を連れていては、いざという時に足手纏いになる」
「丁度、今のように、な……」
 口々に吐き捨てる連中を尻目に、俺はそっとサリアに耳打ちした。
「この先に吊り橋がある。俺が合図したら急いで橋を渡れ」
「シルヴァは?」
「……俺は後から行く」
 俺はタイミングを計った。一歩間違えれば、二人共逃げ場を失ってしまう。
「女を庇うなんて、らしくないぜ、シルヴァ」
「戻って来い、シルヴァ。今なら、まだ間に合う」
「脱走兵の末路は、お前もよく知ってるだろう?」
 ジリジリと詰まる距離。
 俺の背を冷や汗が伝った。そんな俺の焦りを感じ取ったのか、奴らの殺気が一瞬緩む。
 その隙を逃さずに、俺は叫んだ。
「今だ、行け!」
 弾かれたように、サリアが俺の背から離れた。
「何のつもりだ」
 目の前で男が唸る。俺のかつての仲間……。だが、剣を向けることに何の躊躇いも生まれない。
 俺は、そうやって育てられた。
 仲間など存在しないと。 
 信じられるのは、自分自身だけだ、と。
 でも、今は……。
/ 8ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp