第1章 出会い
少女の名は、サリアといった。
国はずれの小さな村で暮らしていたが、数年前に、都に行った兄を訪ねて行くところだと言う。
今では出世した兄が、家族を呼んだのだそうだ。しかし、両親は村を離れたがらず、結局、妹であるサリアが一人で都を目指すことになったらしい。
それにしても、娘一人で旅に出るなんて無謀な話だ。しかも、出会ったのは旅人が良く使う表街道ではない、いわば裏の街道だ。当然、山賊や追いはぎの類が山ほどいる。
「お前のような娘が、あんな場所を通るなんて、自殺行為だ」
知らず知らずの内に、窘めるような口調になる。俺には、関係ないことのはずなのに。
「だって、通行証、持ってないんです」
「持ってない?」
主な街道や街には、必ず役人がいる。そして、そこを通り抜けるには、通行証が必要だ。
それなのに、持ってないだと? よくそれで旅なんかする気になったものだ。
呆れる俺を、サリアは悔しそうに見上げた。
「盗まれちゃったんです」
「だったら、引き返せば良かっただろう。女一人で都まで行けると思ってるのか?」
きつい口調で言うと、それきり、サリアは俯いてしまった。
丁度良い。この後、この娘がどうなろうと知ったことか。じきに陽も暮れる。こんな奴に構ってる暇はない。
そう思いながら、俺はあることを思いついた。
「都までなら、俺が連れて行ってやっても良い」
「本当ですか? ありがとうございます!」
何も知らずに、サリアは俺に頭を下げた。
不覚にも人助けなんてしてしまったが、これはこれで都合が良かったかもしれない。
一人で旅を続けるよりも、女連れの方が怪しまれないだろう。