第2章 出会い
めっとまるで小さな子供を叱る様な仕草を見せる女性に、私は小さく「ごめんなさい」と謝罪をのべる。
「今軽い食事を用意してるからそれを食べたらもう一度寝て、起きたら少しだけ私とお話してくれるかしら」
「……はい」
次に目が覚めると室内は薄暗くなり、昼間室内を照らしいた陽の光の代わりにオレンジ色のライトがぽうっと光を灯していた。
今何時だろう、と暫しボーッとした後水を貰おうと部屋を出る。
廊下のライトは照らされていたけれど辺りはしんと静まり返り、誰の気配も感じない。
多分皆二階にはおらず一回にいるんだと思う。
タンタンと静かな足音を立てて階段を降りていく。すると丁度降りきった先に人影を見かけピタリと足をとめた。
それに気付いた影が私の方へと踵を返す。
「お?」
軽く2メートルはあるであろう長身のその人影は金糸の髪を軽く後ろに流し、整った顔立ちをした青年だった。
この熱帯国シンガポールには不似合いな厚手のコートを羽織っていて……。
あれ、でもこの人確か……。
脳内の記録回路を巡らせる。まるで走馬灯の様に浮かぶ人物の顔をひとつひとつ確かめながら、とある人物のイメージでピタリと巡りを止める。
A-O・オラトリオ
それが私の脳裏に浮かんだそのイメージの名前。そう、今私の目の前にいるこの人物の名前だった。
「Aナンバーズ……ORACLEの守護神……」
ぽつりともらしたその一言に、彼の眉がピクリと微かに跳ね上がる。
「お前、今なんて……」
訝しげな鳶色の瞳が真っ直ぐに私を捉え、此方へと歩みを向けた時
「おや、起きたのかい?」
ゆっくりとした口調のテノールが私と彼との間を割り込むように耳に届く。
二人で視線を奥間の方へ向けると、彼――オラトリオより頭一つ分背の低い男性がニッコリと笑みを携え立っていた。
私の顔を暫し見上げて、うんと頷くと
「顔色はいいみたいだね。痛い所とかは? ないかな」
そう訊ねられ、私はコクリと頷き返事を返す。
「そう。おいで、今皆リビングでお茶をしてるから」