第5章 わたしのなまえ
「……っ私は、本気です!」
「じゃあやってみな。今すぐな! だがな、お前を消しはしない。少なくともこっから追い出してORACLに通信出来ないように強制的にガードをかけるだけだ。お前が思っている様な事にはならねえよ」
「……っそんなの、私は……っ」
「お前がどう思おうと!」
「っ……」
「お前が、どう思おうと。俺達ロボットはお前達人間を傷付ける事は出来ない。それは電脳空間でも、だ。それが教えなんだよ。俺達を作った研究者達の……親達の教えなんだ」
「……う……ぅ」
くしゃり、と私の顔が歪み頬を涙が伝う。
私は、人ではないのに。
でも彼らヒューマンフォームロボットからみればきっと私は人なのだろう。いいえ、それはみのるさんや正信さん……信彦とて同じこと。
私は、自分で自分の存在が許せないんだわ。人でもなく、機械でもないこの“私”という存在が。
誇らしかったDrクエーサーの作品である私という存在。でも今はとても__。
「オラトリオさん。今日は……今日だけは私を追い返さないで下さい。私はORACLEには何もしません。貴方にも何もしません。だから……だから今日だけは私をここにいさせて下さい」
今日だけでいい。私に人としてではない居場所を下さい。BUNDLEとしての……居場所を。
彼のローブに手を伸ばし、もう一度今度はそっと掴む。まるで子供の様に連れて行ってと言いみあげれば、オラトリオは暫し私を見た後。
「ついてこい」
と私の手とりORACLEへと続く門をくぐった____。