第2章 出会い
「だって名前が外国の人っぽいんだもん。見た目は日本人だよね」
「私は外国人ではないわ。人間よ」
そう、今は人間。でも以前は……。
私は真面目に答えたつもりだったのに、何故か少年――信彦は吹き出し笑い始めたのだ。
何故笑うの? と首を傾げ問えば、信彦は「だって」と目尻にたまった涙を拭う。
「#セト#姉ちゃんが面白い事言うんだもん」
面白い? どこが?
「#セト#姉ちゃんが人間なのはわかってるよ。俺も人間だよ」
「ええ、そうね。人間だわ。ロボットではないのでしょう?」
言いながらスッとまだ幼さの残るふっくらとした頬に触れる。
見た目11~12歳くらいのその少年の頬は綺麗に赤みがさしていて温かい。以前の私にはなかった物。人間の温もり。
「貴方は温かいもの。ロボットにはない温もりよ」
すりすりとその頬の触り心地を確かめる様に指先を動かす。
彼はそれになされるがまま私をただ見上げている。
その時
「あら、おはよう」
扉が開かれる音と共に可愛らしい声が耳に届く。
出入口へと視線を向けると信彦に面差しが似た小柄な女性がニコリとした笑みを携え立っていた。
「母さん」
信彦が跳ぶようにベッドから降りその女性へと歩みよる。
母さん……そう、この二人は親子なのね。
「信彦、今カルマがこの子のご飯用意してくれてるの。運んで来てくれる?」
「うん、わかった!」
女性の頼みに信彦は大きく頷くと部屋を出ていく。階段を掛け降りる足音が遠くなったのを確認して、扉が閉められる。
「気分はどう? 痛い所とかない?」
ベッドの脇に腰を降ろしながら信彦と同じ質問を問いかけてくる。私は首を左右に振り「いいえ」と言葉を返す。
ふいに女性の掌が私の額へと添わされる。
「熱は下がったみたいね。貴女、熱射病で倒れてる所を信彦が見付けて連れて帰って来たのよ」
「熱射病……?」
「そう、熱射病は怖いのよ。死んじゃう事もあるんだから。こんな炎天下に帽子も被らないで歩き回るなんて」