第5章 わたしのなまえ
それ以上、先を読む事は出来なかった。
視界が霞む。喉がひくついてうまく呼吸が出来ない。レポートを持つ指先が震える。胸の辺りがムカムカして吐きそうだ。
私。
私、自分の過去に興味がなかった訳じゃないの。
目覚める前の自分が何者なのか。考えなかった訳じゃないの。
だけど。
だけど。
こんなの、望んではいなかった。
私はDrクエーサーが最後にお造りになった作品。
“お前は私が初めて失敗した作品。だが初めて成功した作品でもある”
その言葉は、なんとなく私があの人の特別なんだと言われてるみたいで嬉しかった。私はこの世にただ一つしかいない存在だって言ってもらえてる気がして。
でも何故かしら。
私。
私……。
今はとてもこのレポートを書いた人に会いたい。
私を知る人。人間だった時の私を知る人。
でも違うんだ。私はこの人が名前を呼んでいたセトじゃない。
私は。
私の名前は
A-B BUNDLE…………____。