第5章 わたしのなまえ
「セト。あの子は、エリオットは……Drクエーサーは貴女をなんと言う名前で呼んでいたの?」
「名前?」
私? 私の名前は。
Drは私を……。
「Drは……Drは私をセトとお呼びになっていました。それ以外の名前なんてありません」
「本当に?」
「それ以外にありません。私はセト。Drが生涯最後にお造りになった人間形態ロボットで……」
「貴女はBUNDLE」
「……え?」
「貴女の正しい名前はA-B BUNDLEよセト」
「ち……っ違い、ます!」
ガタリ、と音をたて立ち上がる。
「わ、私はDrがお造りになった最後のっ……」
「そう、貴女の名前はセトであっている。そのセトという孤児の少女の頭に埋め込まれた電脳。それがAナンバーズA-B BUNDLEなのよ」
セトという孤児の少女の頭に埋め込まれた電脳。
埋め込まれた……電脳……って。
「軽くだけれど、貴女の事を調べてもらったの。調べたと言っても、以前エリオットの研究所で働いていた研究者に聞き込みをした程度だけれど」
Drカシオペアはサイドのテーブルから一つに束ねられた紙をとり、私の方へ差し出してくる。それはレポート用紙で御丁寧に写真付きだった。
勿論、その写真に写っていたのは私だ。
「セト……ファミリーネームは不明」