第5章 わたしのなまえ
「え……?」
瞳を何度か瞬かせて、もれたのはその一言だ。
「……私、今」
今、何を言ったの……?
彼女はなんと私に言ったの?
BUNDLE? 今日はA-Cとの初対面の日? 何? 何のこと?
先程交わされた会話が録音された音声の様に私の電脳を巡る。1字1句、違える事なく流れる。それが1周、2周、3周と続いた後目の前がチカチカと電光石火の様に光り私は口をわななかせた。
「あ……あ……」
意味も無くもれた声に、横で見ていたみのるさんが「#Name_1#ちゃん」と少し驚きを含ませながら私の背を抱いた。
「大丈夫よ、みのる。電脳がさっきの会話の解析に追い付けていないだけ。悩んでいるだけだから」
「う……ぅ……」
半ば唸る様な声を出した後、私は力が抜けた様にガクリとDrカシオペアの膝へと倒れこむ。その私の背中をみのるさんがゆっくりさすってくれる。
その感触に小さく息をつくと、頭を左右に振った。
「わ、わた、し……」
未だチカチカとする目を手の甲で擦りながら「大丈夫セトちゃん」と問い掛けてくるみのるさんに「ごめんなさい、大丈夫です」と返事を返す。
「立てる? ソファーに座りましょうか」
「は、はい……」
Drカシオペアに乗りかかる様に座り込んだ私。流石にこの体勢は失礼だわと立ち上がろうとしたけれど、上手く四肢に力が入らない。痺れた様にプルプルと震えるのがわかるだけ。
「正信さん、お願いします」
「ええ」
なかなか立ち上がらない私に、見かねたみのるさんが後ろにいた正信さんに声をかける。正信さんが私を抱き上げる様に持ち上げ、ソファーへと座らせてくれた。
「もう、大丈夫です。すみません」
身体の痺れは2分ほど続いた。その間ずっとみのるさんが横で背中や腕を摩ってくれていて、それは凄く私を安心させてくれた。本当に、この人にだけは私感謝してもしきれないななんて再度確認させられてしまったけれど。
「Drカシオペア。先程の質問には何か意味が?」
スッと背を正して彼女と向き合う。もしてして。もしかしてだけれど、彼女は私の事に気が付いて……?
私の問いかけに、Drカシオペアはやや間をあけ口を開いた。