第5章 わたしのなまえ
A-Bと言えば確かA-Aの後継機として作られたロボットだったはず。
ス……と片目を閉じれば脳裏に分厚い辞書の様なハードカバーの本が一冊、イメージとして浮かぶ。
それをパラパラと1枚1枚捲ってゆくと、ある目的のページへとたどり着く。
「【A-B BUNDLE】バンドル
製作者名、Dr.クエーサー。Aナンバーズ、A-Cコードの補助を前提として製作されたが身体制御プログラムが安定せず廃棄処分。その後プロジェクト凍結が発表される」
スラスラと脳裏のページを読み上げた後、はたり、と口元を押さえた。
「A-C……? A-B BUNDLEがA-C CODEの補助?」
A-Cってこの前のあの人のことよね? ORACLEにいた刀を持つあの人。
あら? でも確かA-Cはシグナルのサポート機体だってクォーターが……。
言ってた様な。とベッドの上で自問自答を始めようとした時トントンッと響いたノックの音。
はい、と返事を返せばドアが開かれひょっこりと顔をのぞかせたのは珍しい、正信さんだった。
「おはようセトちゃん」
優しい笑みを浮かべそう挨拶をしてくれる彼に、私の顔にも自然と笑みが溢れる。
「おはようございます。珍しいですねどうかなさいましたか?」
お世辞でも寝起きがいいとは言えない私を起こしに来るのはいつもみのるさんか信彦だったから、正信さんが来るのは本当に意外な事。
ベッドからおりながら「今日なにかありましたかね?」と訊ねれば、ちょっと会わせたい人がいるんだと言われて首を傾げる。
「会わせたい、人……?」
誰かしら。正信さんが言うってことは人間型ロボットの誰かかな。もしかして研究所関係者?