第4章 A-Cという男
「何故だ?」
「貴方を信用できないから。貴方も私を信用していないでしょう? だったら言うだけ無駄です」
オラトリオの顔つきが少しだけ険しくなったのがわかる。それにはオラクルも気が付いた様で、小さく身体を揺らしながら彼の肩に手をおいた。
「でもそうね……ここから無事に現実世界へ出してくれると約束をしてくださるのであれば、一つだけ。一つだけ教えてもいいわ」
流石に電脳が機械だと言っても身体は生身の人間。あまり長い事ダイヴをしたままだと感覚がズレて動けなくなってしまう。
どうします? そう視線で言えば、オラトリオは私を睨みつけたまま「言え」と顎をしゃくりあげる。
「Aナンバーズの人達の身辺には気を付けてください。彼らが一番に狙うとしたらきっとAナンバーズ……戦闘型ロボットです」
「何故そう思う?」
「ロボットを制御出来るのは確かに人間です。けれど捕まえる事は出来ません。彼らにとって人とは脆弱で弱い生き物に過ぎない。攻撃出来ないようプログラミングをされていたとしても、逃げる事は出来る。それを人の手で捕まえるのは無理です。だとしたらどうします? 同じ力を配分した同じロボットに対応させるでしょう?」
それが戦闘型でなくても自分の邪魔になるなら関係はないはず。
「電脳集団の中でも随一に機能性に長けたAナンバーズ。同じAナンバーズの中でも音井ブランドと呼ばれる貴方やMIRAの使われた最新型のシグナルは彼らにとっても脅威になるはずですもの。だから……気を付けてください」
「信用できるのか? そんなのお前の虚言の可能性だってある」
「信じるか否かは御勝手に。でも心当たりはあるのではないですか?」
「…………」
彼らは……クォーターは手加減を知らない。クイーンもそう。クワイエットは……まぁ話が通じる分まだマシかしら。
「クォーターは戦闘型ではないし、シグナルやパルスには腕っぷしは敵わないだろうけれど彼にはこれがある」
言いながらこめかみ辺りを人差し指でつつく。
「彼の強みは電脳。計画性のある戦法なんていくらでも捻り出すでしょうね」
クワイエットも、クイーンもクイックも誰もがそんな彼を恐れている。何を考えているかわからない、皆彼をそう言っていた。それはそう、制作者であるDr.も。