第4章 A-Cという男
「何度も言うように貴方とクォーターの間に何が起きてるか知らないし興味もない。この話だって信じるかどうかは任せます。ただシグナル達だけではなく貴方も同じ様に危険だという事は知っていた方がよろしいかと」
「……わからねぇな」
「わからない? 今の説明がですか」
「違う」
「では何がですか?」
「お前が何がしたいかさ。あいつらの仲間にしちゃ口が軽いな。まぁ内容の真実味はどうか知らんが」
「言ったでしょう? 信じるかどうかは任せますって。誰かが危険な目に合うのも、怪我をするのも私は望んでませんもの」
いや、あえて言うならいっそこの人は機能停止してくれたっていいわ。いい加減うっとうしいし。
「お話は以上です。さぁ、出口を作って下さいな。そろそろ夜が明けます、ダイヴしてる姿なんて誰にも見せたくないの。特に信彦にはね」
腰掛けたソファーからゆっくり立ち上がり、上から彼をたしなめるように見下ろした。
オラトリオはそんな私を暫し見た後、諦めたのか先程より短い溜め息を吐き出して指先をパチンッとならす。
すると、何もない真っ白な壁に赤い扉が現れ音をたてて開かれる。それをピッと親指で指しながら「行けよ」とオラトリオが促してくる。
「ありがとうございます」
軽く礼をのべて扉へと歩む途中で、何かを思い出した様に「あ」と声をあげ踵を返した。
「A-Cのあの刀の事なのですが……」
「あん?」
「私、あれが怖いんです。逃げたくなると言うか……近付いたら自分が消えてなくなる気がして。オラクルさんはあれが怖くないんですか?」
ハッカーに何となく似てる。自分が脅かされる様な……そんな感覚に。でもオラクルさんは怯えるふりは見せてなかった。ならハッカーとは要素が違うのかしら。
「オラクルが反応するのは侵入者だけだ。元からこっちの世界にいる奴は大丈夫なんだよ」
お前と違ってな、なんてどうして最後に一言多いのよこの男は。
「あーっそう。それは大変失礼致しました。私は別に悪意をもって侵入したわけではないんですが」
フンッとそっぽを向いて止めた歩みを再会させる。そのまま私はオラトリオが出した扉をくぐり抜けその場をあとにした━━。