第4章 A-Cという男
「質問を変えよう。そうだな……あいつらのやろうとしている事にお前も一枚噛んでるのか?」
「いいえ」
「漸く喋りやがったな……。じゃあDr.クエーサーがあいつらに死ぬ 前に何かしら命令したとでも?」
「いいえ。Dr.は関係ありません。今回の事はあくまで彼らの一存。多分彼らの……クォーターの独断」
「ほう?」
オラトリオは組んでいた足を組み直し、私の言葉に興味深げにかぶりを振る。
「じゃあ今回のMIRA強奪もあいつの独断……だと?」
「ええ」
「笑わせんじゃねぇぞ。俺達ロボットはな、作られたその時から人の命令なしじゃ動けないようプログラミングされてんだよ。それなのにそんな……」
「そうなんですか?」
「そうなんですか? だあ!?」
「Dr.は私にロボットとしての常を教えて下さいませんでした。一人で考え、一人で行動し、人であれと教えられました」
それは私だけではなかった。Dr.はそれをクォーターにもクワイエットにも望んでいた。それがDr.の研究者たる最終的な望みであり目標だと。
でも私にはその人の常を理解する事が出来なかった。だからきっとDr.は私を失敗作だとおっしゃったのだわ。
「Dr.は私をロボットとして行動を制限する事はなさいませんでした。それはクォーターも同じ。彼らも私をロボットではなく人として見ていました。彼らは私にだけは何も話そうとはしなかった……。だから私には彼らが何をしようとしているのか、予測は出来ても確定は出来ない」
「その予測ってのは?」
「それは……言えません」
オラトリオの目尻が上へとつり上がる。