第4章 A-Cという男
「ここへ来た理由は以上です。どうなさいます? このまま私を外へ追い出すかA-Cの情報を教えるか……それともここへ拘留したままにしますか?」
勿論全力で逃げますけど、と付け加えるのを忘れずに。
そんな私を鳶色の瞳がじっと何かを探るような視線を向けてくる。
じっと。じーっと。
思ってることは大体わかるわ。どうせ私が何か嘘をついて騙そうとしてるとでも考えてるんでしょ?
やや間があった後。オラトリオが前屈みだったじょうたいをゆっくり後ろへ起こしながら口を開いた。
「教えてやってもいいぜ」
「「え?」」
私とオラクルさんの声が重なる。
「オラトリオお前本気で言っているのか?」
「ただし条件がある」
「条件? 何でしょうか」
「お前の持っているクオンタムに関する情報と交換だ」
クオンタムの情報……?
「製作に関する情報でしたら私より貴方方の方が詳しいのでは? 彼らはAナンバーズですもの。Dr.は彼らをATORANDUMに登録をしているはずです」
「そっちの情報じゃねーよ」
「では何を?」
「つい最近の事だ。奴ら━━クォーターって野郎がうちに侵入して音井博士のMIRAの情報をハッキングしていきやがった。何のためにかは知らねぇがどうせろくなことじゃねぇだろ」
クォーターが? MIRAを?
もしかしてもう動き始めたの? いえ、それには私が持っているパーツが必要になる筈。あの完璧主義者のクォーターの事だもの、パーツが集まらない内にそんな賭けみたいな事はしないはずだわ。
「……その顔。何か知ってるってー顔だな」
目を伏せ考え込んでしまっていた私を見、オラトリオが半ば睨みながら言ってくる。それに私はすぐに返事は返さずに視線だけを彼に返した。
「あいつらの目的は何だ? 何をしようとしている?」
「…………」
「あいつらの制作者は本当にDr.クエーサーなのか?」
「…………」
黙したまま私は彼を見やる。オラトリオは幾つか質問を私に投げ掛けた後、何も答えないのにイラついたのか小さく舌打ちをした。