第4章 A-Cという男
場所は彼等のテリトリー。見付かってしまったのなら仕方がない。私だって逃げる気なんてないけれど。
「そんな警戒なさらなくても逃げたりしませんよ。私だって今の自分の立場くらいわかります。けど……そうね、私にはあまり時間がないですから単刀直入に言わせて頂きます」
夜が明けるまで。朝になれば信彦かみのるさんが私を起こしに来るはず。ダイヴしてる姿なんて見られたくない。
「A-Cとは何者ですか?」
「は?」
今度はオラトリオが眉を寄せる。何をいきなり言ってるんだと言う顔だ。
「A-Cだけではなく、彼が持ってるあの白い刀……あれは何なのですか? 私はそれを調べるためにここへ来ました」
「何故それが知りたい。何のために調べてる?」
オラトリオの返しに一瞬考えて「私は」と続ける。
「彼が……怖い。正しくはあの刀が怖い」
「怖い?」
「でも何故怖いのかがわからない。それはきっと私が彼を何者か把握出来ていないからだと思い当たったからです。でも正規のルートから彼が何者かを調べてもわからなかった」
「だからここまで来た……と」
「Aナンバーズはその性能の高さから一部公開されていない事柄があるから。ORACLEだったら探せばあると思いました」
「だからって何故こんな真似をする必要がある。仮にもDr.クエーサーのラボにいたなら他にも方法があったろうが」
「私は正規の研究員じゃありませんから。研究員専用のパスコードを持っていない私はハックするしかない。貴方に聞いても教えてくれないのはわかっているもの」
それにORACLEは傷付けてないでしょ? そう最後に締め括れば、オラトリオの口からもれたのは罵倒の言葉ではなく盛大な溜め息だった。
その溜め息が何処と無くこちらを小バカにした様な物に聞こえて、私は口をへの字に曲げる。
なんでこの人はこう私に対して辛辣な態度しかとれないのかしら。フレンドリーにとはいわないけれど、もっとこう……なんて言えばいいかわからないけどマシな対応してくれてもいいのに。
まぁ、この人にそんなの求めるだけ無駄か。