第4章 A-Cという男
真夜中。
皆が寝静まったのを確認して、私は自室にあるPCの電源を立ち上げる。静寂な暗闇の中で、鈍い機械音とキーボードを叩く音だけが響く。
暫くキーボードの上で指を走らせたあと。
「ダメだわ。公式の場所には簡易の文しか載ってない」
PC画面に映し出されたA-Cに関する情報文を指でなぞりつつ一人ごちる。
あの後もう一度ダイヴをしてみたものの、ORACLEに行くことは出来なくて(多分セキュリティの問題で)そのまま夕飯を食べて自室に戻った。そして今に至る。
オラトリオとの話も中断する形で終わってしまったし、A-Cの事も気になるしで眠れなかった私は情報収集をする事にしたのだ。
「ATRANDAMの学生向けのネットワークじゃ当たり障りのない情報しか見れない。やっぱりORACLEに問い合わせるべきかしら」
けどORACLEのネットワークはATRANDAMに所属する研究員とそれに関連する人にのみ発行されるIDとパスが必要だったはず。私は勿論持っていないし、Dr.クエーサーのは調べればわかるけどきっと怪しまれるわ。それにクオーターに教え込まれた情報はきっとORACLEにある物と同じだと思うし。
「A-C・コード。製作者はDr.カシオペア」
確かDr.カシオペアはDr.のお姉さんだったわよね? Dr.が御健在の時にはお会いする事はなかったけれど。Dr.も御自分の事について話す人ではなかったし。
「Dr.カシオペアと接点がないのだからA-Cとも何もないはずなのに」
目が覚めてから私はずっとDr.の研究施設内のみで生活をして来た。私の電脳が機械だと言うことを知っているのはDr.の助手研究員の中でも極僅かな限られた人達だけ。
一人で研究所の外へ出る事も禁止だったし、決まった人以外との交流もなかったし。
と言うか、私何でこんなにあの人に拘っているのかしら。別に私の計画には関係ないし必要でもないのに。危険だと思うなら尚更近付くべきじゃないわ。寧ろ避けなければならない対象……。