第3章 何故人は泣くのかしら?
「心拍の上昇……これは恐怖? 何故A-Cに恐怖を抱くの?」
わからない。わから……ない。
「#セト#……?」
「はい」
「大丈夫、か?」
「大丈夫、とは? 私どこかおかしいですか?」
「えっ、いや、そう言う意味じゃないんだ。おかしいって言うか……あー……困惑?」
「困惑?」
「そう。何か困ってる様に見えるからさ」
困ってる? 私が?
「困ってる……のかしら。ええそうね、困ってるのかもしれません。だって私A-Cとは初対面の筈なのに」
記憶にはないのに、身体が反応する。それが何故なのかわからなくて、困ってる。どうすればいいのかがわからない。
「初対面の筈なのに、私の電脳は彼に近付くなって危険信号(シグナル)を発する。何故?」
何故かしら? 何故?
それだけをひたすら口にし首を傾げる私のその姿は、端から見れば異様な光景に見えたかもしれない。
けれどその時の私は、次から次へと電脳へと表れる情報の処理に追い付けなくなっていたのだ__。