第3章 何故人は泣くのかしら?
「オラクル……ORACLE? 貴方がORACLE?」
ORACLEは電脳集団アトランダムの総ての情報を管理・保有する巨大ネットワーク機関。全世界にいる研究者の中でもごく一部(殆どがアトランダムの研究者)のみが閲覧する事が出来ると教えられた。
それが彼だと?
「ORACLEって人の形をしていたの?」
「知らなかったのか?」
「ORACLEが"何故存在するのか"は教えられたけど"どの様に存在するのか"は聞いてません。ただ保持する情報の量・質共に大きすぎるが故に違法な侵入者が後を絶たず、初期は何重ものバリアやファイアウォールを張っていてもシステムダウンが起こるほどだった。それの改善策としてガーディアン……オラトリオが制作された。それが私の教えられた情報です」
ただ質のいい情報機関だとだけ。まさかその"ただの情報機関"がこんな人の形をしたものだったなんて驚きだわ。
「でも何故私をここへ? ORACLEがここに"ある"と言うことは、ここは機密エリアなんじゃ……」
「ああ。だから何を話しても誰も聞いていないと言うことだ」
「どういう意味です?」
「お前さんの話をもっと聞きたくてな……ああ、あいつらも来たみたいだな。オラクル、入り口をあけてやれ」
「わかった」
オラトリオの呼び掛けにようやっと口を開いたオラクルが頭上に向けて指先を振れば、光の線が現れまあるい円を描いた。その円の中に黒い空洞が出来たかと思えば、ばさりっという音と共にライトパープル色の糸のような光が眼前に広がった。
パープル色の光-シグナル-は私の姿を捉えるなり髪と同じ色の瞳を大きく見開く。