第3章 何故人は泣くのかしら?
「侵入-ダイヴ-は?」
「侵入-ダイヴ-? 電脳空間に降りろと言うことですか」
「ああ」
「出来ますが……何故?」
「話したいことがある」
話したいこと? これ以上何を話すと言うの?
「別にわざわざ降りる必要なんて……話なら今ここでも出来るでしょ?」
「ここでは話せない。壁に耳ありっつーからな」
えぇ? どういう事? わざわざ降りてまで話すことって何。何で?
私の脳裏に浮かぶ疑問の数々。
さっきから本当に、何なんだろうこの人は。言動もそうだけど、今一考えが読み取れない。
まるでクオーターみたいな……
ふと浮かんだその名前に、私は「あ」と小さく声をもらしていた。
そうだ、ずっと何かが引っ掛かっていた。何故かオラトリオが苦手だって感じて、あまり近寄りたくないと思った時があった。こんな風に攻撃的な態度をとられるって言うのもあったけど、それとは別にどこか生理的に受け付けないと思ったのはきっとクオーターに似ているからだわ。
そう言えばクワイエットが以前QUONTEMのロボットは音井のロボットを元にして作られたって……。
思考を巡らせていると、オラトリオが訝し気な視線を向けながら「おい」と声をかけてくる。
それに「何でもありません」と返して、それぞれのコードを襟元のジャックへと差し込んだ___。