第3章 何故人は泣くのかしら?
「心配なさらなくても時期を見計らって音井家も出ていきます。元々ここへ来たこと自体計算外ですし。感謝は……してますが」
「出ていったところでどうする。行く場所もないんだろ」
「ないけど、こんな風に貴方とやりあうよりマシだわ」
口は災いの元だとはよく言うけれど、まさかあの日のたった一言でここまで敵対されるなんて思ってもみなかった。
「とにかく、今朝出過ぎた口をきいた事は謝罪します。お話は以上です、お邪魔しました」
口早にそれだけ言って出ていこうと踵を返したとき、もう一度腕を掴まれて私の眉がピンと跳ねあがる。
「まだ何か?」
今度は痛みを感じない力加減だったけど、まだ何か言い足りないのかと少しだけイラつきを感じたのは仕方がないこと。
オラトリオは自分の前の椅子を顎で指し示すと、座れと促してくる。
なんなの? そう思いながらも抗うのも面倒だしと言われるがまま椅子に腰を降ろせば、何故かオラトリオは二つのコードを手渡してくる。
一本はオラトリオの胸元のジャックに、もう一本は彼の手元のPCに繋がっている。