第3章 何故人は泣くのかしら?
「クォーター……?」
「そうよ! Dr.が製作なさった最後のAナンバーズ。A-Q.Quarter。私は彼から逃げているの。いいえ彼だけじゃない、クイーンからもクワイエットからも。皆今でも私を探しているはず……」
Dr.が私を製作する以前に産み出した人間形態ロボットは全部で四体。一番始めに私を追いかけて来ていたクワイエットは物静かな性格をした青年ロボットで、私の身の回りの世話役兼監視役。
クイーンは女性の容姿をした戦闘形ロボットで、あまり話したことはない。
クイックは一番最後に作られた少年の姿をしたクイーンと同じ戦闘型のロボット。彼ともあまり接点はなかった。
そしてクオーター。
彼は。
彼が私に全てを教えた人。人間形態ロボットの歴史、形態の種類や登録されたロボットの詳細。そしてオラトリオやORACLEの存在も。それがDr.からの命令だったのだそうだ。
でも彼は一つ失敗をしたの。
そう、ロボットであるが故の失敗。
私は、余計な事まで知りすぎたのだ。彼らにとっては……そうまるで爆弾の様な存在。
「貴方がORACLEの秘密を守る守護神ならば、私はDr.の秘密を守る守護神。Dr.の最後を知る者……。だから逃げなければいけないの。逃げて、逃げて……この秘密が誰にももれないように守らなきゃいけない。クオーターは私が持っているDr.の秘密を欲している、探している。だから私は逃げるの。どこまでも、どこまでだって逃げなきゃいけないの」
独り言のように並べ立てた言葉に、オラトリオは眉根を寄せながら口許へと手をあて考える素振りを見せる。
別に難しい話をしてるつもりはないんだけど……。
「貴方が私にどんな感情をいだこうともこの際どうでもいい。嫌いになるなら嫌えばいいし、敵だと怪しむなら好きにして。けど一々突っ掛かってくる事はやめてください」
面倒だし、第一争う理由だってないもの。喧嘩したいなら他所でしてほしいわ。