第3章 何故人は泣くのかしら?
「俺だって人間は傷付けてはならないというプログラミングをされちゃあいるが、お前は別だ。中身がロボットならな」
「え……?」
白い手袋に包まれた指先が、ゆっくりと伸ばされ、私のコメカミ辺りをコツコツとノックをする様に突っつく。
「ここが電脳だと。機械だと言うならお前さんを敵だと思うのは俺には当たり前なのさ」
「そんなの……だったら貴方にとっては機械全部が……シグナルもパルスもカルマさんだって敵って事じゃない!」
カルマは違うけれど、シグナルやパルスは音井博士が製作した人間形態ロボット。他からは音井ブランドと呼ばれ、本人達も兄弟の様に互いを認識してるって。
そもそもロボットに兄弟なんて概念があるのかは怪しいけれど、もしそうならオラトリオは身内さえも怪しんでるって事になるのよ。そんなのおかしいじゃない。
「俺にとっては機械を扱える奴は誰であろうと怪しまねばならない存在だ。まぁシグナルはおバカだからな、誰かが入知恵しない限りは大丈夫だろうが」
「私だって何がよくて悪い事かくらいわかります! ~~っいい加減放してください! 今朝の事謝ろうと思って来たのに何でこんな扱い……信じられない、何なのよ貴方は!?」
無理矢理腕を引っ張って振りほどくと、その勢いのまま彼の頬をひっぱ叩いてやる。スパンッと乾いた音が辺りに響いたけれど、相手は何ともないと言った顔で(当たり前だけど)私を見下ろしていた。
「私は何もしないって言ったらしない! した所で私に何のメリットがあるというの? 私はただここから逃げたいだけなの。クオーターから逃げたいだけなの!!」