第2章 出会い
「……でも、そうかも知れない。Dr.は私が殺したのかもしれません」
だって……
「確かにあの日、最後にDr.のお傍にいたのは私だったのだから……」
ポツリ、と聞こえるか聞こえないかの小さな声で呟やかれた言葉を拾ったのは正信さんだった。
「君は、Dr.クエーサーとはどんな……助手、だったのかい? もしそうだとしたら君の若さだったらそれなりに話題にはなっているはずだ」
「私は……」
Dr.の何だったのかしら? 彼は私を長年の夢だと言っていた。そして初めての失敗作だとも。
「私はDr.の最後の作品です。そして初めての失敗作」
「作品……?」
「体はどうかはしらないけれど私の電脳は……」
スッと人差し指で自分のコメカミ辺りを指差す。
「私のこの電脳はDr.がお作りになられた物です。電脳には名前はなく、私の#セト#という名はこの体の呼び名だとおっしゃっていました」
「電脳が作られた……物? お待ち下さい。貴方は人でしょう? なのに作られた物?」
戸惑いに目を見開く三人を一目しながら私は話を続ける。
それは他人事のように淡々と。
「ええ、体は確かに人です。ですが私の脳は機械で出来ています。これが見えますか?」
長い髪を掌で纏め上げながら、三人に見えるように私は耳元を指差す。
ちょうど耳朶の裏辺りの髪の襟足にそれはあった。
それを見せた瞬間、背後で息を飲む音が聞こえた。
そこにあったのはコードをつなぐジャック。私はここにコードをつなぐことで色んな機械の情報を自らの電脳へと記憶することが出来る。反対に私の電脳の情報を機器に引き出すことも出来るのだ。