第2章 出会い
じゃあ、じゃあ私がこの場所に来たのは偶然じゃなくて……。
「信彦も知ってたんですか? 知ってて私を……」
「まさか。さすがにあの子にこんな話出来やしない。これは大人の問題だ。彼が君をここへ連れてきたのは偶然だよ」
「そう、ですか」
それを聞いて私はほっと胸を撫で下ろした。何故かわからない、けど信彦には知られたくないと思ったの。私がどこから来たかだなんて。
あの純粋な瞳をする少年には知られたくないと思ったの。
「じゃあ私がここへ来た事は貴方方にとっては好都合、だったんですね」
クスリと笑みを溢しながらゆっくりとソファーへ腰を落ち着ける。
それを見て正信さんも私の向かいのソファーへと座る。顔は優しく微笑みを携えているけれど、黒渕が縁取るガラスの向こうの瞳は笑っていなかった。
彼と……オラトリオと同じ瞳。何かを探る瞳。
「ひとつ……言わせて頂いてよろしいですか?」
「うん?」
「先程の私とオラトリオさんの話を聞いていらした事を前提としてですが、私は本当にORACLEにもましてや音井家の方々にも害をなす気はありません。これだけは信じて下さい」
そう言えば、正信さんは「何故?」と問い首を傾げる。
「だって私を見る今の貴方の目は敵を見る目だから。視界に写る相手をいぶかしみ、怪しみ、どんな行動に出るかを見張ってる。それは貴方方にとって私が得たいの知れない何かだから?」
Dr.の研究所にいる人達もそうだった。研究所にいる学者達はいつも私を好奇の目で見ていたわ。でもそれに敵意はなく、ただただ珍しいものを見つけた時の……そう、子供の瞳だった。
「それとも……私が事故を起こしDr.を殺した犯人だと思ってらっしゃいますか?」
私がその言葉を口にしたとき、一瞬で部屋の空気が固まる音が聞こえた……気がした。
三人の表情は無表情に。けど視線はしっかりと私を見据えて。
あ、言わなきゃよかったかな、なんて今さら思っても遅いけど。