第2章 出会い
ソファーとオラトリオに挟まれるような態勢にさせられた私は、無表情のまま見下ろしてくる彼から視線をそらせずにいた。
「な……んですか?」
コクリと喉をならして、絞るようにそう言葉を放つ。私を見る彼の瞳はまるで氷のように冷たい。
「……お前は誰だ? 何故俺がORACLEの守護者だと知っている」
「……何の事かしら」
「しらばっくれるなよ。あの時確かにお前は俺を見て言った。ORACLEの守護者、A-O・ORATORIOだとな」
「知らないわ」
ふぃっと顔を背ければ、すぐに顎を掴まれ元の位置へと向かされる。
「いたっ……」
批難の声をあげるけれど、大きな掌は私の顎を掴んだまま放してくれない。
放しなさいと脅しを込めた視線で彼をみやるが、それを上いく冷たい視線に私はビクリと身体を揺らした。
「お前さんが何もんで何の目的で音井家に近付いたのか知らねぇが、喧嘩を売る相手は間違えるなよ」
捨てるようにそう言われ乱暴に顎を解放される。
冷たい瞳。なんの感情も込めずただそこにある"物"を見つめる瞳。
……なんて顔してるのよ。そんな顔、それじゃまるで……。
「……たしは」
ポツリと呟いた言葉に一度はなれたオラトリオの視線が再度私を見据える。
「私は貴方に喧嘩売るつもりもORACLEに害をなす気も元からないわ。私は自分の身を守れればそれでいいもの。貴方を知ったのだって別に興味があったからじゃない。それを覚えることがDr.の課したカリキュラムだっただけ」
「カリキュラム……? ORACLEがカリキュラムだと?」
「貴方達ロボットだってそうでしょ? 人の手によって作られ、そして人によって知識を与えられる。私もそう、人によって作られ人によって知識を与えられた。貴方達と同じ」
何者、なんて私が知りたいわ。
目が覚めたらDr.クエーサーのラボにいて、私は彼から知識を得た。ただそれだけの記憶しかない。
「ORACLEが機密事項なのも教わった。でもだからなんなの? 私はハッカーではないし、それ以前にORACLEがどうなろうとも関係ない。貴方にそんな事言われる筋合いもそんな目で見られる理由もないわ」