第2章 出会い
声が聞こえる……。
綺麗で優しい歌声。
そう……まるで子守唄のように私の耳へ響いてくる。
私はこの声が大好きだった。彼の歌声が大好きだったのよ……。
「……ちゃん、#セト#姉ちゃん!」
「……ん……?」
微睡みの中聞こえた「朝だよ」という信彦の声と揺さぶられた身体に、私の意識は夢の世界から現実へと呼び戻された。
「おはよ」
元気な声音とにっこり笑顔で言われて私もふと笑みをもらす。
「早いのね」
上体を起こしながら問い掛けた言葉に信彦はきょとりと瞳を瞬かせた。
時計に目をやると時刻は丁度7時半を指していた。
「そう? 母さんや父さんはいつも六時には起きてるよ」
あぁ、そう言えばDr.もいつも早かったな。クイーンは歳だからってからかっていたけれど科学者は基本早起きなのかしら。
「起こしてくれてありがとう信彦」
「どういたしまして! じゃあ俺先に降りてるね」
「うん、私もすぐ行くわ」
部屋を出て行く信彦を見送ってから、ふと先程の事を思い出す。
眠りの中聞こえた歌声。
綺麗で優しい歌声。
人の脳ならいざ知らず電脳である私が夢を見るはずないわ。
じゃああれは? 大好きだと感じたのは……。
「誰だったんだろう……」
考えても仕方ないか、そう自己完結させてベッドから出て着替えを始めた。