第3章 私たちの秘密
『あの、失礼?』
そう言いながら、
そっと、その女性の腰に手をまわして、
男から引きはがした。
その時、女の子の瞳から涙がこぼれたのが見えた。
はぁ・・・この男・・・
男「お、お前!誰だ!!!なんだよ!!」
頭に響くような怒鳴り声を上げる男。
『・・・いや、彼女が嫌がってるように見えたので、』
男「は?ふざけんな!僕は彼女に用があるんだ!!
邪魔すんな!!!」
『彼女が嫌がっていることも分からないのですか?
女性を泣かせるなんて男のすることではありませんよ?』
男「・・・っ!? う、うるさい!!!
彼女を返せ!!!!!」
『返せとは、なんですか?
雰囲気からすると、あなたの物でもでもないでしょうに』
クスッと笑ってやった。
男「だ、だまれ!!お前なんなんだよ!!
急に出てきやがって!!!」
全く話にならない・・・
全然、落ち着いてくれない。
どうしようかな~と考えていると、
男の顔を見て思い出した。
『あれ?あなたは、桐山さん・・・?』
男「・・・っ そ、それがどうしたんだよ!!」
あはは、ラッキー・・・(笑)
『俺のこと、お忘れでしょうか・・・?
5年ほど前、俺の家でお会いしたのですが』
男「え・・・?5年前・・・?」
『はい』
そう言って、かき上げている前髪を崩して笑いかけてみた。
男「・・・あっ!!」
冷汗が止まらない感じを見ると、
どうやら、思い出してくれたようだ。
『ここは、私の父の顔に免じて
お引きいただけないでしょうか?』
ニコッと再度笑うと、
その男は、苦い顔をしてさっさと逃げていった。
ふぅ~、親父のおかげでどうにかなった・・・
彼の会社は、俺の親父の融資を受けていた。
あ~、でも久々に親父の顔を利用しちゃったな~~
まあ、女の子を助けるためだから
しょうがないか・・・