第5章 近づく心
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「あの、リヴァイさん。」
リヴァイが書類を数枚片づけた頃だった。
ようやく決心を固めて脱衣所から出てきたアイリーンは、リヴァイの後方から声を掛けた。
書類に向けていた視線を、自分の後ろにいるであろうその人へと向ける。
先程、脱衣所で見た格好と寸分違わない恰好でその場に佇む
アイリーンは、それでも少し恥ずかしそうに体の前で手を組んでいる。
「シャワー、借りました。その、あ、ありがとうございました。」
「………あぁ。すっきりしたか。」
「はい、お陰様で。気持ちよかったです。」
にこっと恥ずかしそうに、でもさっぱりとした顔で笑うアイリーンに、リヴァイもつられてふっと笑みを零す。
「飯はそこにある。勝手に食べていていい。俺はシャワーを浴びてくる。」
ソファーの前にある机に、簡単なパン食を用意してあった。
そこを指さしながら言うと、アイリーンは頭を下げながらありがとうございます。と礼を伝える。
リヴァイは用意していた自分の着替えとタオルを手に持つと、ソファーに座りながら水を飲むアイリーンを見た。
まだ少し濡れた髪の毛が、いつもビシッと決めているアイリーンとは印象が違い、つい見つめてしまう。
パンを目の前にして、どれから食べようかと思案しているその姿も
いつもハンジの傍で溜息を吐いているアイリーンとは違って、少し幼く見える。
………普段と違うと姿が、自分に気を許してくれているような錯覚に陥って、少しだけ満足してしまう。
(自分も、考えが拙いな。)
一番大きなパンを手に取って、嬉しそうな顔のアイリーンを目の端だけで見つめて
リヴァイは脱衣所へと足を向けた。