第5章 近づく心
扉を閉めたあと、リヴァイはソファーにぐったりと凭れた。
目を瞑って息を吐き出す。
瞑った暗い視界には、先程のアイリーンの姿がくっきりと浮かんでくる。
白いシャツに負けないほどの白い肌。
程よく筋肉のついた長い足。
……ちらりと見えてしまった、黒っぽい下着まで。
全て今目の前にあるかの如く、はっきりと浮かんでしまう。
女の裸を見たことがないわけではない。
逆に見すぎて少し嫌気すら差していると思っていた。
なのにどうだろう。
今自分は、目の前に浮かぶ一人の女の
肌を
表情を
その全てを。
思い出して表情が崩れそうになるのを堪えている。
「本当に……なにやってんだ、俺は。」
最近は調査へ行く準備に忙しいという名目で、‘あの仕事’はしていない。
そのせいで、少し溜まっているんだろう。
リヴァイは自分にそう言い聞かせて、目の前の無防備な映像を消し去るように 目を開く。
そのまま視線を横へずらせば、溜まっている書類の山が見えた。
………仕事でもしていれば、少しは紛れるだろう。
机の上にある水をぐっと飲み干すと、リヴァイは書類の山へと足を向けた。
気づきそうな自分の想い。
だが、どうしても気づきたくなかった。
今ならまだ、気づかないまま 想いを捨てられる。
リヴァイは利き手にペンを持ち、まだしなくてもいい仕事を片付け始めた。