第5章 近づく心
どうもあの日、リヴァイに抱きしめてもらったあの日から。
リヴァイに対して少し無防備になっている自分がいる。
相手はあのリヴァイ兵士長なのだ。
1人で一個小隊ほどの力を持つと言われる生きる伝説。
リヴァイ班に所属もしていない者は、話しかけることすら憚られる、そんなお方なのだ。
私が普通に会話が出来るのは、ハンジさんの班に属しているから。
ただそれだけなのだ。
…とは思っていても、アイリーンは少し自分ののぼせていた。
私は、リヴァイさんにとって少しは“特別な存在”なのではないのか、と。
そんな呆れた考えがアイリーンの頭に 浮かびは消え、浮かびは消えて
最終的にはずっと浮かんだままなのだ。
「す、すいませんリヴァイさん。少し気が抜けてしまいました。」
「…? 何故俺を見て気が抜ける。」
「何故…でしょうか。なんというか、人影が見えた時に…あー、あの人影がリヴァイさんだといいなぁ。なんて考えてしまったものですから。」
本当にリヴァイさんでほっとしました。
そういってほほ笑むアイリーンに、リヴァイはグッと息をのんだ。
いつもはどこかの部屋で会う事が多い二人。
こうやって練習場で出会う事はもちろん、汗を流しているアイリーンに会うのは初めてだった。
過去に会っていた事はもちろんあったかもしれないが、意識などしたこともないリヴァイの記憶に、それはない。
茜色の夕日を受けてキラキラ光るアイリーンと、その少し子供っぽい笑顔は、リヴァイの固い決意をグラグラと揺れ動かしていた。