第5章 近づく心
声に気づき、アイリーンは走っていた足を止める。
荒く乱れた呼吸を整えながら、こちらに向かってくる人影を見つめた。
夕暮れにさしかかり、あたりが茜色に染まり始めている中
その人だけは少し暗い色を湛えている。
もう何度も見た、彼の姿は目を凝らさなくてもはっきりと認識できる。
それほどまでに、アイリーンの目から見ると彼、リヴァイは輝いて見えた。
「ど、どうしてリヴァイさんがここに…?」
迷いなくこちらへと歩みを進めるリヴァイにそう問いかけると、ふっとリヴァイは口角を上げた。
「毎回、壁外調査が近づくとこういう所で自主練している輩がいるからな。今回はどんな馬鹿がいるかと思って見学しに来たんだ。」
口調は呆れと笑いを含んでいるが、その目は真っ直ぐとアイリーンに向けられている。
“心配している”
そう言われている気がする…。
と思うのは、私の自惚れかな。等と思うと、アイリーンはふふっと笑顔をつくってしまう。
嫌味を言ったつもりなのに笑われてしまい、リヴァイは少し不服そうな顔を向ける。
それに気づいたアイリーンは、慌てて顔を元に戻す。