第5章 近づく心
ハンジに水筒に入れた水を持って行ったあと、アイリーンは自室へと戻っていた。
どうしようもないこの感覚。
そわそして心が落ち着かない。
明日いよいよ壁外へ赴くのだと思うと、心がざわざわして気持ち悪いのだ。
ハンジには部屋で休んでいるように言われているため、自室へと戻ってきているが、どうしても落ち着かない。
休んでなどいられない。
「…よし。ちょっと行ってこよう。」
アイリーンはベッドから立ち上がると、そのまま自室を後にした。
「…ハァ…ハァ……ッ……」
建物の外へ向かうと、いつも皆が練習で使用している広めの広場へと向かった。
そこには坂道や砂利道等の練習用の場所から、馬の手入れに使う道具まで様々と用意された場所だ。
アイリーンは軽く屈伸運動をすると、よし。と背伸びをして広場を走り始めた。
何かをしていないと落ち着かない。
でも、ほかの人の邪魔をするわけにはいかない。
ならばもう、自主練習の名のもとに走り込みでもするしかない。
そう決め込んでアイリーンは走り続けていた。
もうどのくらい走っているのだろう。
額から汗が流れてくるのをまた拭い、また拭い。
袖が湿るを通り越してきた頃だった。
「…なにやってんだ。こんな時に。」
低く、柔らかな声が少し遠くからアイリーンの耳に届いた。