第16章 誕生日譚~顛末
そしてこれが、とても嬉しいことなのだと…嬉しくても、こんな風になることがあるのだと、それを理解したのは、それからすぐだった。
これも…佐奈だけが自分にくれるもの。
佐奈がくれるからこそ、自分は感じ取り、嬉しいと思うことができる。
思いを噛みしめて、そんな感慨に包まれる自分を誤魔化すように、煉は少しだけワインを口に含んだ。
「じゃあ、明日はご馳走作ってくれるんだ?」
わざと茶化すような言い方をすれば、今では大分(?)料理の腕も上達した佐奈は、善処します…と肩を竦めながら料理を口に運んだ。
「あ、これ、美味しい!」
「これ?ああ、本当だ。俺も好きな味だ」
時に他愛ない話に笑って、次々に運ばれる料理に舌鼓をうって。
最後のデザートが運ばれてコースが終了したはずの、その時、オーダーしていない一皿がことり、と煉の前に差し出された。
「え……?」
「あの?」
二人がきょとん、とするそこには、白い…やや大き目の皿の中央にケーキが1ピース鎮座していて、それを囲むように、プレートを彩るように様々な色合いで描かれた模様と、チョコレート…だろうか、『Happy Birthday』と書かれている。
それは明らかに煉へと宛てられたささやかな誕生日ケーキだった。
でも、二人は何も頼んでいない。
佐奈にしても、こっそり店に依頼する余裕はなかった。
それなのに、一体何故、と思う二人に、そのプレートを運んできた給仕係の男性がぺこり、と頭を下げる。
「申し訳ございません。失礼ながら、本日お客様がお誕生日だと耳にしてしまいまして。ささやかながら、当店よりお祝いをさせていただきました」
それは、思わぬサプライズだった。
『お誕生日おめでとう』とグラスを合わせていた自分達だから、店側にしたら、それはすぐに察知できたことなのだろうけれど。
まさか、こんな計らいをしてくれるなんて。
「良かったね、煉」
佐奈は自分のことのように嬉しくて、そのまま目の前の煉を見れば、当の本人は予想外にも押し黙ってしまっていて。
佐奈は瞬き、それから、目を和ませながら、煉に代わって給仕を見上げた。