第1章 急転直下
『擬人研究所』……。
それは人間になりたいという動物達の願いを叶える夢の研究所…かはよく分からないけれど。
動物を擬人化し、いつかは本当の人間となるべく導き、その為の研究を日々重ねている。
そして、その研究所に一人の女性…佐奈が就職したのは、まだ最近のことだ。
だから与えられる仕事もまだまだ補助的業務…早い話が事務作業が多くて、擬人化した面々と直接交流する機会なんてゼロに等しかった、はず…だった、のに……。
「やや変則的と言わざるを得ませんが、まあ良いでしょう」
うんうん、と腕を組んで勝手に頷いている男…本来ならずっと目上に位置する人物・シオンに、佐奈は目を剥いた。
「え、あの…でも私はまだ新人で……」
「誰でも最初は初心者ですよ。擬人研究所自体がまだ若い存在なのですから、教師も同義でしょう」
「それは…そうかもしれませんけど……」
この研究所で働いてみたいと思った自分だ。
当然、基本情報くらい頭に入っている。
それに、確かに擬人研究所の歴史はまだ浅いが、擬人化の認知度、理解度は研究所の努力もあって今では随分と広まっているようだ。
その証拠に、街中で擬人と思しき存在を何度も目にするようになった。
ああ、浸透してきているんだなあ、なんて、佐奈なりに嬉しく感じていたものだ。
でも、それとこれはと話が違う。
佐奈はぷるぷる、と首を振った。
まだ自分には無理だと、そう思うから。
この研究所では、人になりたいという動物をまず擬人化し、同時に、人間として生活するに必要となる様々な事柄をカリキュラム化して授業を行う。