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i7 in Wonder land

第8章 眠り姫と黒の影


「連れて来れたんだね」

気が付けば、ドアの前にはあの方が立っていた。

「彼女の美しさに囚われるのも分かるが…私の元へと連れてきなさい」
「…何をするつもりですか」
「テン、私の部屋に」

抗えない。
そんな悔しさを噛み締めながら返事を返し、眠り続ける彼女を抱き抱える。
こんなに軽くて細い身体に、何が起きているのだろうか。
これから起こる出来事に不安を感じながら、テンは自室を後にした。



その頃の虹の城は、混乱に包まれていた。

「アリスが…消えた?」

彼女を一人にしてしまったせいだ、もっと気にかけていればこんな事には…。
後悔に包まれるイオリの肩を力強く叩き、声をかけたのは兄のミツキだった。

「イオリ一人のせいじゃない」
「にい、さん」

そうだ、今ここで嘆いている暇はない。
少しヒリヒリとする肩に手を添え、目の前にいる兄を見つめる。

「…そうでした。今は、アリスの無事を確認しなければなりませんね」
「おう、そうだな」
「なぁ…さっきの執事、偽物だったぞ」

タイミング良く、タマキが二人に駆け寄る。
その横には傷だらけの執事がタマキの肩を借りていた。その様子だと立っているのがやっと、と言ったところだろうか。息を切らしてタマキに寄りかかっている。

「た、大変…申し訳ございません…っ」
「謝ることないって!大丈夫だったか?」

執事の言葉に起こる様子もなく、ミツキが優しく声をかける。

「すみません…お気遣い、ありがとうございます」
「こいつ、黒のローブ着たやつにいきなり襲われたって。多分そこで姿を真似された」

タマキが大体の経緯を説明する。
そこにまた駆け寄る姿が二つ。

「ナギ、リクも」

ミツキがその姿に一早く気付き、声をかける。

「ワタシ達国境のfenceの異変を見付けまシタ」
「フェンスの、一部が…」

全力疾走したからか、リクは息が絶え絶えになっていた。その様子を見かねてナギが制すると、自ら状況を説明し始める。

「この国の端の目立たない所デス…街からも遠い場所でfenceの一部がcrashされていて…」

こんな時でも英語の発音は流暢なナギ。

「とりあえず状況は把握しました、リクさんは自室で休んで下さい。そして貴方も」

イオリはそう言うと辛そうな表情を浮かべる執事に優しい笑みを向ける。
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