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i7 in Wonder land

第8章 眠り姫と黒の影


その返答が気に入らなかったのか、ヤマトはより一層機嫌悪そうに顔を顰め、ガクに詰め寄る。

「知らないって何だよ」
「…本当なんだよ。テンに渡されてアリスに飲ませろって指示が出ただけだ」

ガクも悩んでいた。
その様子を見て察したのか、ヤマトが短く息を吐いた。

「本当、みたいだな」
「そうだって言ってるだろ…俺だって今焦ってる」
「お前、上は本当にテンだけなのか?」
「その筈だ。だが…テンの様子が変なのは本当だ」

やっぱりか。
そう呟くヤマトの声。

「虹の国にも広がってるのか、噂」
「いや、城の中だけだ…が、広がるのも時間の問題だな」
「そうか…」

良くない事が起きている、二人はそう確信した。



「失礼します」

ノックと共に声が聞こえる。

「誰」

短く問うと、部下が名を告げた。
先程、自分が指示を出した部下だった。ここに来たということは成功したのだろうか。

「いいよ、入って」
「はっ、失礼します」

静かに扉を開けて入ってきたその部下の後ろにもう一人の姿があった。同僚だろう。

「テン様、無事に任務完了致しました」

後ろから姿を現した部下の腕の中には、ぐったりとしたアリスが眠っていた。

「そこのベッドに寝かせておいて」

指示通りにアリスを寝かせた部下は、失礼しますと一礼をしてそのまま部屋を後にした。
僕のベッドの上に横たわるアリスは起きる様子も無く、ただ目を瞑ったままだった。

「…可哀想な人」

思わず呟く。
可愛らしい人だと思っていた彼女が、今はこうして狙われている存在となり、静かに眠らされているのだから。
だが、こうして感傷に浸っている暇はない。
あの方の元へ連れていく前に、薬の謎を解かねばならない。出来れば…あの方が望んでいる力の事も。

「失礼するよ」

届かないとは思っているが、一応断りを入れる。そうしてから、そっと彼女の首筋に触れる。…脈は打っている。
生きてはいるとは思うが呼吸をしていない。このままでは酸素不足で死に至るのでは無いか?
首筋に触れた手を滑らせ、心臓の近く…胸部へ触れる。

「っ…」

触れようとしたその瞬間。何か熱い物に触れたかのような痛みを感じて、慌てて手を引く。
何が起きたのだろうと思った時、彼女の胸部は青白い光を放ち始めた。

「これは…?」
「テン」

ハッとして振り返る。
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