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i7 in Wonder land

第8章 眠り姫と黒の影


「shadow…ですか」

ナギが流暢な英語で呟く。

「それ、俺も聞いたことある。テンテンの裏」
「やっぱり…みんなも思ってたんだね」

タマキに便乗して、リクも口を開く。

「急に、会ってくれなくなったし…ヤマトさんの言う通り、冷たくなった。…でも、何か違うんだ、本当に嫌われてないんじゃないか、って…思うんだ…」
「リク、さん…」

イオリが苦しそうにリクを見つめる。
その時、ミツキが場を和ませようと声を出す。

「っし!へこたれてても何も変わんないんだ、今はとにかくアリスの薬の謎だ!」
「…ミツ」

ヤマトが見つめるその笑顔には、どこか無理があった。
でも、その気持ちはみんな同じで。

「さて…とりあえずアイツだな」

ヤマトは珍しく、自分の衣装の猫の尾から緑色の石が付いたシンプルなチャームを手に取ると、ついさっきアリスに飲み物を持ってきた執事の顔を思い浮かべた。



「どうだ、アリスはあの液体を口にしたか?」

黒のポーンの駒から、上司の声を聞くと口の端を上げて報告する。

「えぇ。その後突然倒れてから、眠ったままの様です」
「眠ったまま…そうか」
「流石ですね。アリスを奪う為には手段を選ばない…まさに、全ては我が国のため…ですね」
「…」

上司の声が聞こえなくなり、黒のポーンの持ち主は焦りを覚える。
…喋り過ぎたか。

「あの、では俺、アリスを連れて戻りますね」
「は?」
「俺でも十分動けますよ。何しろあのクジョ…いえ、テン様のご指示なので」

初めて直々に任された任務だ、失敗する訳にはいかない。
そう意気込んで伝える。

「安心して下さい、ガク様。貴方の手を煩わせること無く、この任務を遂行してみせます」



その言葉を聞いた直後、通信が途切れた。

「テンの、命令…?」

俺は薬を飲ませた後連絡をくれ、と伝えただけだ。その後は自分でアリスを攫う予定だった。

「…焦ってる姿って珍しいな、ガク」
「っ!」

慌てて振り返るも、声の主の姿が見えない。
…まさか。
勢い良く頭上を見上げる。するとそこには予想通り、緑の髪を靡かせた猫が機嫌悪そうにこっちを見下ろしていた。

「…ヤマト」

名前を呼ばれると、軽やかに木から飛び降りる。

「よ」
「ったく、ビビらせんなよ」
「どっちがだ。アリスに何飲ませた」
「…知らねぇ」
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