第7章 黒き疑惑
陸さんが手招きする。
よく見ると、席には一織さんと三月さん、環さんとナギさんと陸さんが座っていた。
「あれ…ヤマトさんはまだ来ていないんですね」
「そうなんだよなー、あの猫何してるんだか…」
壮五さんの問に三月さんが呆れたように答える。
すると、狙ったかのようなタイミングで大和さんは姿を現した。
「誰が猫だ。これでも急いだんだけど?やばい話聞いたし」
「うぉっ!びっくりした!」
「兄さん、驚きすぎです。…ヤマトさんは一体何を…」
「待って!とりあえずご飯食べよう?」
一織さんの言葉を遮るように陸さんが提案すると、環さんがすぐに賛同する。
「そーしようぜ、俺腹減った」
「タマキさんまで…ですが、そうですね。食事を済ませましょうか」
そうして、この食事会は始まった。
美味しい食事に楽しい会話、明るい雰囲気に包まれていたこの食事会。
始めはテーブルマナーなど心配事もあったが、父のお陰で何とか切り抜けられた。そして私が元いた世界の話や、この国の話など、たくさんの話をしているうちに、あっという間にテーブルの上の豪華で美味しい料理は無くなっていった。
そして、執事の様な人が私達一人一人の前に美味しそうなデザートを並べていく。
「美味しそう…!」
「今日のデザートはティラミスケーキです」
思わず口に出してしまった感想を聞き逃さなかった一織さんが、デザートの説明をしてくれた。
「ティラミスに合う珈琲豆を厳選していますので、程よい苦味と甘さが口に合うかと」
「ありがとうございます!」
ますます美味しそうに感じた時。さっきとは違う執事の様な人がグラスを持ってきてくれた。
「…特製のドリンクでございます」
「ありがとうございます」
グラスには淡いピンクの液体が注がれた。
桃かな、イチゴかな?可愛い色だなぁ。
「俺達には無いの?」
「まずお先にアリス様から、と思いまして…」
なるほど!と陸さんが納得し、私は先に飲んだ方が良いのかなと思ってグラスに口を付けた。
リンゴだったり…?
「アリス飲むな!」
叫んだのは意外にも大和さん。
でも、私はその勢いに驚き、少しその飲み物を飲んでしまった。
「や、ヤマトさん?」
「oh…驚いてしまいました」
「どうした?ヤマト」
壮五さんに続いてナギさんと三月さんも口を開く。