第7章 黒き疑惑
全員が驚いて大和さんを見つめる。
「アリス、今すぐ戻せ」
「…へ?」
自分でも素っ頓狂な声が出たのがわかる。
でも大和さんの真剣な目が、事態の深刻さを物語っていた。
「っ!?」
急に、胸が苦しくなる。
何、これ…熱い!
まるで焼け焦げている様な熱い苦しさに席に座っている事すら出来なくなる。
「遅かったか…!」
大和さんは…何を知っていたの…?
私はそのまま、意識を手放した。
「…ヤマトさん、何を知っていたのですか?」
アリスを客室に運び、戻ってきたソウが険しい顔をして俺に問う。
そりゃそうだ、いきなり俺が慌てた時にアリスが倒れたのだから。
「聞いたんだ」
俺は素直に、数時間前に聞いた事を話し始める。
黒の国がアリスに関わる何かを企んでいる事、黒の王が怪しい小瓶を部下に渡していた事、そしてその小瓶の液体は「死にはしない」薬だと言う事。
「…そして、これは俺が前から気になっていた事だ」
そう前置きをしてから、俺はとある噂話を始めた。
「黒の国が敵国として出来たばかりの頃はいいライバル関係だった。…みんなもわかるだろ?ある時から急激に変わった。冷たく突き放されたり、我が国が支配するだの…まぁ、リクが一番不思議に思ってる事だよ」
「それ、は…」
申し訳ないが、リクをそのままにして話を続ける。
「で、実は勝手に向こう行って探ってたことあるんだよ。そしたら…」
「ヤマトさんあなたそんな危ない事してたんですか!?」
急にイチが声を荒らげる。
ったく、自分も危ない目に合った事あるくせに他人になるとこれだ。可愛いやつめ。
「大丈夫だって、いつもの事だし。…で、本題に戻るけど、向こう行った時引っかかることを見付けた」
柄にもなく、周りにいるみんなの顔を見る。
そして、口を開く。
「黒の王…テンには、影がいると思う」