第7章 黒き疑惑
「今日はみんなが揃う気がするんだ!だからアリスも一緒にどうかなって」
笑顔の陸さんに対して、一織さんは笑顔が消えていた。
「この状況下でみんなが揃う…これはただ事じゃない気がしますが」
「だから尚更、アリスがいた方が良いでしょ?」
何となく察した。
多分、私に関わる事なんだ。黒の国、とか…。
「…少々話が重くなってしまいそうですが、大丈夫でしょうか」
私を気遣ってくれたのかな。
一織さんが申し訳なさそうに聞いてくれた質問。逆に(誰の事か分かっていないが)みんなが揃う食事会に混ざっても良いのだろうか、と思いつつ返事をする。
「はい。大丈夫です」
この言葉が、この後ちょっとしたピンチを迎えることになった…。
「どうしよう…」
数分後。
目の前には沢山のドレスが用意されていた。
一織さん曰く「全員が揃う食事会、というのもありますが…今の格好では目立ちます。この世界に合わせた衣服を用意しますので、そちらにお着替えください。今着ている衣服はこちらでお預かりしますので」…という事らしい。
「こんなにあったら迷うなー…」
赤色やオレンジ色、水色の可愛らしいものから…黒色や緑色、紫色の大人っぽいもの…黄色の華やかなものなど…何着も用意されていた。そもそもなぜドレスが常に用意されていたんだろうか…これも前のアリスが関係しているとかなのだろうか?
見慣れないドレスの量に頭を抱えていると、ドアをノックする音が響いた。
「失礼しても?」
「あ、はい!」
ゆっくりと扉を開けて姿を現したのは壮五さんだった。
「あ、ごめんね。着替えるところだったかな」
「いえ…悩んでいたので大丈夫、です…」
思わずその姿に見とれてしまった。
先程まで着ていた衣装と同じ色合いなのに、装飾等が施されていて華やかな出で立ちだった。
「変だったかな…?」
私の様子を見て不安げに尋ねる壮五さん。
変だなんて。その逆。
「すごくお似合いで…すみません、ビックリしちゃいました…」
「ふふ、ありがとう。…照れるなぁ」
これは…確かに今の服だと浮いちゃうな…。
って、それより!
「壮五さんはどうされたんですか?」
「そうだったね。実は届け物をしに来たんだ」
そう言って壮五さんは、そっと私の頭に触れた。
くすぐったい。
「…ナギくんが、アリスにって」