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i7 in Wonder land

第7章 黒き疑惑


「もう新しい仕事か。相当切羽詰まってんのな」

ガクがテンに問いかける。

「君達には関係無いでしょ。…アリスにこれを飲ませて」

そう言うと塀を避ける様に高く放り投げられた小瓶がガクの手元に受け止められる。

「これ、何だよ」
「さぁね」

テンも良く分かっていない液体だ。説明の仕様がない。だが二人に知られてはいけない為、適当にあしらう。

「テン…説明してくれないと分からないよ?」
「リュウの言う通りだろ、テン」

リュウと呼ばれた影は茶色の髪を不安げに揺らす。
その声に賛同するようにガクも便乗する。

「…死には、しない」

そう短く告げると、淡い桃色を靡かせたテンは急ぎ足でその場を去る。
これじゃあ、まるで…逃げてるみたいだ…。
唇を噛み締めて。



「やっぱり、おかしいよ」

その場に残された静寂を切り裂いたのはリュウだった。

「ここ最近…アリスが来てから特に、元気が無いみたいだけど…」
「何となくは感じてた。けど…それってアリスに関係してんのか?」
「わからないけど…無くは無いかなって」

再び訪れる沈黙。
耐えきれずガクは小瓶を握り締めてリュウと向き合う。

「とりあえず動こうぜ」

黙ってても何も変わらねぇ。動いていれば、何か掴めるはずだ。
その意思を感じ取ったのかリュウは静かに、かつ力強く頷く。



「…とりあえず、アリスが危ないのな」

二人が去った後。
近くの木の上で猫のように身体を休める緑色。

「しょうがない、城に行くか…」

大きく伸びをした後、軽々と木から降りる。そして渋々と城の方へ向かう為に姿を消した。



「体調はどうですか」

その頃、部屋に顔を覗かせたのはシャープな黒色だった。

「一織さん」
「顔色も良くなってきていますね。…良かった」

ふと、笑顔を見せる一織さんに不覚にも胸が高鳴りそうになる。
心配してくれたんだ、なんだか嬉しいな。
そう思うと自然と自分にも笑顔が浮かぶのがわかった。

「心配をおかけしてすみません…ありがとうございます」
「礼には及びませんよ、当たり前の事をしたまでですので。…ところで」

コホン、と軽く咳払いをした一織さんが言葉を続けようとしたその時。

「アリス、一緒に夕食食べない?」

明るい赤色が顔を覗かせた。
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