第2章 適合者
「その時今までピクリとも動かなかった左手がまるでAKUMAを求めていたかのように反応し、父を破壊しました……。僕は破壊した父に歩き続けることを誓いました。僕のような犠牲者を増やさないためにも……どうか……一緒に戦ってください……」
アレンは再びアランに向かって頭を下げた。
するとアランはアレンの前に立ち顔を挙げさせた。
「言いたいことはよくわかりました。ですが、今すぐに心の準備ができる訳ではありません。時間をください」
「わかりました、どうかよろしくお願い致します」
この日はそれでお開きになり、アレンとトマはそれぞれ部屋に戻り、アランは女性に少し外に出てくるといい、酒場を後にした。
冷たい空気がアランをつつみ、頭を冷やしていく。
イノセンスと呼ばれるものはまだ少し怖くてアレン達に持っていてくれと預けていた。
今は本当に何も持たないでその身一つで外へ来ていた。
「寒い……」
空を見上げるとこれでもかというほど星が輝いていて、世界は残酷だと思い知らされた。
ここを離れなければいけなくなるという現実がどうしても受け止められなかった。
「おばさんにまだ、何もお返しできてないのになぁ……」
そう呟いたときだった。
「寒そうな格好してんな」
いきなり温もりに包まれた。
顔をあげるとそこにはティキが立っていた。
「ティキさん……!」
「どうしたの?そんなくらい顔しちゃって……俺がキスして慰めてやろうか?」
ティキはニヤニヤしながらアランの顔をのぞき込む。
「そんな冗談やめてください……。好きでもない女性はにそんなこと言うなんて……勘違いされてしまいますよ……」
アランは少し顔を赤くして俯いた。
しかし、次の瞬間顔を強く上に向かされ、息が止まった。
ティキに唇を塞がれていたのだ。
「好きでもないやつに、そんなこと言うかよ……」
ティキは早口でそういうともう1度アランの唇を塞いだ。
キスなどしたことがないアランは息の仕方がわからず、深くなっていくキスについていけない。
軽くティキの肩を叩くと一瞬唇が離れるがまたすぐに塞がれてしまう。
やがて、どれ位だったのかわからないが、ティキは満足したのかアランから唇を離した。