第2章 適合者
「アランにはこの街を離れて僕達と一緒に黒の教団へ来てもらいます」
「黒の教団へ行った後はどうなるんですか……?」
「イノセンスとのシンクロ率をあげたあと任務へ出てAKUMAを破壊してもらいます。また……外部との連絡は一切遮断されます」
そこまで聞いたアランの瞳には絶望の色が浮かんでいた。
「私、本当に適合者なんですか?なにかの間違いですよね?だって、今まで普通に暮らしていたんですよ?こんなのなにかの偶然で、そんなことありえるわけ……」
「……あなたが適合者で間違いありません。僕達がそのイノセンスを持っていた時、イノセンスはまるで赤子が母親を求めるかのように熱を持ち眩しいくらいに光暴走していました。ですが、あなたの手の中に落ち着いた今、イノセンスは落ち着いています。どうか、世界を救うために僕達と一緒に黒の教団へ一緒に来てください。お願いします」
アレンとトマは立ち上がるとアランと女性に頭を下げた。
「今エクソシストはとても少なく、一人の負担がとても大きくなっています。このままでは対処しきれなくなり、さらに多くの犠牲者をうむことになります。あなたの大切な人まで、殺されてしまうかもしれないんです!あなただって、大切な人には亡くなって欲しくないでしょう?」
アレンの言葉を聞いてアランは唇をギュッと噛んだ。
「あんた達さっきから勝手な事言ってるけど、私だってこの子のことを本当の娘のように思ってんだ!突然現れた輩に大事な娘を渡すわけがないだろう!!」
女性はアランのことをぎゅっと抱きしめるとアレンたちに向かって怒鳴った。
「……お気持ちはとても良くわかります。ですが、これは本当に大事なことなんです」
「っ……」
「僕は……幼い頃に自分の育て親をAKUMAにしました」
その言葉を聞いてアランは顔をあげる。
「僕はこの左手がイノセンスで、小さい頃から異形で、親に捨てられました。そんな僕を育ててくれた人が亡くなり、悲しみのあまり、千年伯爵の手を取り父を生き返らせようとしました」
「それで……どうなったんですか?」
「……この左目の傷はその時父につけられたものです。自分のことをAKUMAにした僕に傷をつけたんです」
アランは黙ってアレンの顔を見つめる。