第2章 適合者
離れた唇からは二人をつなぐように銀の糸がたれていた。
それも重力従うようにぷつりときれると、ティキがそっとそれを拭うかのようにアランの唇を舐めた。
「な……で……」
息を切らせながらアランはティキのことを見つめる。
「何度も言わせんな。俺はアランが好きなんだよ」
アランはその言葉を聞いて嬉しさと悲しみで涙を流した。
嬉しいけれど、自分は遠くへ行かなければならない。
この人と結ばれることなどできないのだ。
「ティキさん……私……」
そこまで言いかけるとアランは口をギュッと閉じて、ティキから離れた。
「家に戻ります」
アランは後ろを振り返らず走って酒場へと戻った。
後に残ったティキは、深くため息をつくと木に寄りかかりタバコを吸った。
酒場に戻ると静まり返っていて、どこか居心地が悪かった。
そんなのを振り払うかのように頭を降ると廊下を歩き始めた時だった。
後ろからぎしっという音がして、振り返るとアレンが立っていた。
「どうかされましたか?」
「あ、すみません、そういえばさっき言い忘れたことがあったなと思いまして。あなたが黒の教団へ行くということは、同席していた女性以外他言無用でお願いします。」
「なぜですか?」
「もし、あなたが亡くなったとき……あなたを生き返らせようとする人がいて、犠牲者を増やしたとしたら……」
アレンがそこまで言うと、アランはアレンの口を塞いだ。
「わかりました、だからもう言わないでください……」
アレンがうなづいたのを確認するとアランはそっと手を離した。
「……黒の教団へ私も一緒に行きます。ですが、かわりに条件があります。明日あなたのお仲間もここへ来るんですよね?その時お話します」
「わかりました、では明日の夜までもう1度お話して頂けますか?」
「今夜は失礼します」
アランはそれだけいうと廊下を歩いていった。
アレンはアランが見えなくなると小さく息をつき、自分も部屋へ戻って行った。
部屋に戻るとトマは眠っており、静かな寝息だけが聞こえた。
部屋の窓から見える星空はただただ輝いていた。