第2章 適合者
アレンとトマは夜まで別々に過ごすと夜酒場の前で集合した。
酒場のなかはカウンターが一つと、小さなテーブルがいくつか並んだ簡素なものだった。
だが、中は仕事終わりの男達がおり、活気に溢れていた。
「アレンさん!トマさん!」
「アラン!」
少し息を切らせたアランがアレンたちの方へ駆け寄ってきた。
「来てくださり、ありがとうございます!ゆっくりして言ってくださいね!」
アランはそれだけいうと奥へと引っ込んでいった。
アレンとトマは共に適当な席に座るとアランが出てくるのを待った。
しばらくすると可愛らしいワンピースに着替え少し化粧をしたアランがステージの上に現れた。
昼間の雰囲気よりいささか大人っぽく見える。
ふんわりとした黒髪は後ろで一つに束ねられ、唇には薄く紅が塗ってあった。
目元にも少し化粧を施しており、男達はアランに釘付けになっている。
後ろに控えていた男がギターで軽くリズムをとるとアランが歌い始める。
騒いでいた男達は一気に静まりかえり彼女の歌声に聞き入る。
住んだ歌声はギターの音色によくあい、酒場中に甘く響き渡る。
やがて1曲歌い終えると男達の拍手で酒場は震えた。
カウンターにいる女性と男性もまるでわが子を見るような優しい目つきでアランを見つめている。
「アラン!次はあの曲を歌っておくれ!」
一人の男がそう叫ぶと、ほかの男達も次々に賛成する。
「あの曲歌うの少し恥ずかしいんですけど……」
アランが顔を真っ赤にする中、男達は「歌ってくれー!」と叫んでいる。
アランは静かに「仕方ないなぁ」とつぶやくと後ろの男性を見てうなづいた。
それを合図に酒場は再び静まり返る。
やがてアランが歌い始めたのは、静かな愛の歌だった。
神に恋した少女が別れを告げ生まれ変わった時にまた巡り会えるよう約束をするそんな歌であった。
次の瞬間、アレンの手元にあったイノセンスがアランの元へ飛んでいき彼女の胸をうった。
アランは衝撃に耐えきれず後ろに倒れ込む。