第7章 夢の中の会合
「……きて……起きて……」
そっと体がゆすられる感じがして目を開けると、金髪の可愛らしい女の子が顔をのぞきこんでいた。
「よかった……目を覚ましてくれて」
「あなたは……?ここの……エクソシスト……?」
アランが問うと、金髪の少女はフルフルと首を横に振った。
「私の名前はララ、マテールの亡霊と呼ばれていたわ」
「マテールって……あの……」
「ええ……」
にっこりと綺麗に笑う少女はどう見てもあのマテールに住んでたと言われる亡霊には見えなくて……。
「ララさん……は……どうして……私に会いに来てくれたんですか……?」
「それは……あなたの首筋に埋め込まれているイノセンスの……持ち主が私だったから……かな……」
イノセンスという言葉に反応する自分にいやけがさす。
「私は人形だからイノセンスを扱うことは出来ない……。それにね、あなたの歌にイノセンスはずっと反応してたんだよ」
「え……?」
「マテールにも聞こえてきてたよ、あなたの歌声……。あなたは愛してた人がいるよね……?」
思い浮かぶのはティキさんの顔だった。
笑う時にクシャッとする顔、怒った時に細められる瞳、傷ついた時は真顔になる、体調不良の時は片方の眉毛がぴくぴく動く……。
全部全部覚えてる……。
「このイノセンスはね、愛を知らないと使えないんだ」
「愛……?」
ララはそっとアランの手をとった。
「私もね、人形だけど……ずっと一緒にいてくれた人を愛してた。でも、私は人形だから適合者になれなかった」
「ララさん……」
「このイノセンスはあなたの感情に反応するの。あなたがAKUMAを憎いと思って歌えば、AKUMAにとって毒になるし、誰かを助けたいと思いながら歌えば傷を癒すことだってできる。でもね、どれを扱うにしても……愛を知らないといけないの」
ララは手をアランの頬に移動させた。
「あなたが羨ましいな。私は人形だから……イノセンスが使えなくてグゾルの傷を癒してあげられなかった。でも、あなたは出来る。だからどうか……今に絶望しないで。生き抜いて。そうすればいつかきっと、あなたにも幸せが訪れるから」
「ララさん……でも……私は……」
「あなたは1人じゃないよ。いつだってここに愛する人がいてくれる。私イノセンスを通してあなたのことを見てたから知ってる」