第6章 黒の教団
アランが目を覚ましたのはそれから一日たった夜のことだった。
「……ん……?」
手がとても暖かいことに気づき顔をそちらに動かすと、誰かが手を握ってくれているのがわかった。
アランが横になっている隣でベッドに伏せている。
(名前……なんていうんだっけ……。確か……)
「コムイ……さん……」
静かに呟いたはずなのに、コムイはぴくりと反応した。
そして、顔をあげると優しく微笑んだ。
「寝ちゃってごめんね、おはよう」
「おはよう……ございます……」
「って言ってももう夜なんだけどね、気分はどうかな?」
「特には……」
「そっか、とりあえず何もなくてよかったよ」
コムイはそう言ってまた笑った。
しかし、コムイはすぐに真剣な表情になると口を開いた。
「アランちゃん、君にちゃんと話しておかなければいけないことがあるんだ。そのままでいいから聞いてくれるかい?」
コムイの真剣な表情にNOと言えるはずもなく、アランはコクリと静かに頷いた。
「どうして今ここにいるのか覚えているかい?」
「いいえ……」
「そうだよね。昨日の夜に君はイノセンスとシンクロしたんだ」
「イノセンスと……シンクロ……」
「あぁ。実は君のイノセンスは寄生型だったんだ」
「寄生型……?」
街にいた時と同じようにわからない言葉が出てきてアランは首を傾げる。
「イノセンスには二つの種類があるんだ。一つはイノセンス自体が武器化し適合者が操る装備型。もう一つはイノセンスが適合者の体に寄生し、適合者の体を武器化する寄生型。君はその寄生型だったんだ」
アランはわからないなりに必死に理解し頷いた。
「そしてね、君のイノセンスは今、君の首に寄生しているんだよ」
コムイに言われそっと首筋を触ると昨日まではなかった硬い感触があった。
コムイは医務室に備え付けてある小さな鏡を外すとアランに渡した。
鏡をのぞき込むと首筋には十字架の光り輝く石が埋め込まれていた。
「これが……イノセンス……」
「そして……これは本当に……大切なことなんだ……」
コムイの声が僅かに震えているような気がした。
「昨日来たばかりの君にいうことではないかもしれないけれど、落ち着いて聞いてほしい」
コムイは静かに息を吸った。