第6章 黒の教団
「ヘブラスカ!」
「どうした……コムイ……」
エレベーターが下まで降りると、コムイはヘブラスカに近づいた。
「彼女はアランだ。新しいエクソシストなんだけど、イノセンスと共鳴した瞬間意識を失ってしまったみたいなんだ」
ヘブラスカはコムイからアランを預かると、自分の数ある手で体に触れる。
「……コムイ……」
「なにかわかったのかい?」
コムイがそう問いかけると、ヘブラスカは一瞬口をつぐんで重々しく口を開いた。
「このエクソシストは……短命だ……」
その場にいた全員に緊張が走った。
「生まれつきイノセンスに寄生されている者はイノセンスに慣れ、体は作りかえられている。しかし……彼女のように寄生型イノセンスに体が充分に発達した状態で体に入り込まれると、作り替えるペースについていけずに……意識を保っていられなくなる。それに……彼女のイノセンスは左の首筋に埋め込まれている……。左の首筋は心臓に近く力を発揮するにはいいだろうが体に負担がかかりやすい」
コムイはヘブラスカからアランを受け取るとギュッと抱きしめた。
「ありがとう、ヘブくん」
コムイは微笑むと、そのままエレベーターを上昇させた。
「リーバー班長」
「なんすか?」
「僕は彼女が覚めるまでそばに付き添って、ヘブくんに言われたことを説明したいから、あと任せてもいいかい?」
「わかりました」
コムイはリーバーに頭を下げるとそのまま医務室へと向かった。
「婦長、悪いけど彼女が目が覚めるまでここで待たせてもらってもいいかな?」
「……なにかお話することがあるんでしょう……」
婦長は何かを悟ったように一言だけいうとそれ以上は何も言わなかった。
先ほどヘブラスカに触れたおかげかアランの表情はだいぶ落ち着き、静かに寝息を立てている。
コムイはそっとアランの手を握った。
「君を……この戦争に巻き込んでごめんね……どうか……この戦争が終わるまで僕達に力を貸してほしい……」
コムイは祈るように呟いた。